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気まぐれな魔法使い
小さな喫茶店

その街に住んでいたとき、毎朝の散歩コースの途中に小さな喫茶店がありました。
お店の窓際には、もし近くに草原があったら、そこに咲いているような花が飾られていて、
花瓶の周りには、春になると桜の花びらが、秋には近くの並木通りで拾ってきた色とりどりの枯葉が敷き詰められていました。
お店のママさんはいつも笑顔で僕たちを迎えてくれるので、 無愛想なお客さんもいつのまにか笑顔になっていました。
「今日は暑いですね」とか「近くの公園に猫が捨てられていて誰かもらってくれないかな」とか、ありふれているけれど、暖かさを感じる会話のやり取りが常連のお客さんの間で交わされる喫茶店でした。
窓際の席が僕のお気に入りで、ボーっとしながら外を見るのが好きでした。

それから何年か経ち、学生だった僕たちは就職や結婚をきっかけにその街から旅立っていきました。

「あの、お気に入りだった小さな喫茶店はいまごろどうなっているんだろう。」
久しぶりに合った友達の一言がきっかけで、僕たちは住んでいたその街に出かけました。
そこには、昔と変わらない外見の喫茶店がありましたが、無表情なおばちゃんのまずいコーヒーが待っていました。
そして、窓際の花瓶には萎れたバラの花束が・・・・、

友達がおばちゃんに聞きました。
「前の経営者は今どうしているかご存知ですか?」

「結婚したよ。それで私がここを買ってあげたんだけど、高く買いすぎた。」
「だまされたね。あの女が言ってたほど客が来ない。」

この街に引っ越してきて、毎朝の散歩コースの途中に小さな喫茶店があります。
あの素敵なママさんはいませんが、このお店の店員さんは、ママさんと同じ笑顔で迎えてくれます。

05年03月08日


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